行き止まりや崩落。引き返すための担ぎスキル
グラベル走行を楽しんでいると、地図上では道が続いていても、実際には土砂崩れで塞がっていたり、激しい路面崩落で行き止まりになっていたりする場面に遭遇します。特に下り坂を勢いよく進んだ先が通行不能だった場合、今来た急勾配を押し上げて戻らなければなりません。しかし、あまりに斜度が急であったり、足場が岩や泥で不安定だったりする場合、押し歩きだけでは対応できないことがあります。
ここで必要になるのがバイクを担ぐという選択肢です。40代のライダーにとって、重量のあるグラベルバイクを力任せに担ぐのは体力的にも厳しく、腰を痛めるリスクも伴います。しかし、担ぎを単なる重労働ではなく、困難な地形を突破するためのシステムとして理解しておけば、想定外の事態でも冷静さを保てます。無理に突破を試みて滑落するよりも、安全な足場を選んでバイクを運び、確実に元の道へ戻る判断こそが、大人のリスクマネジメントといえます。
前輪が邪魔にならない逆向き担ぎの裏技
一般的に自転車を担ぐ際は、進行方向に向けてトップチューブを肩に乗せるスタイルが知られています。しかし、この方法ではハンドルがふらつき、前輪が自分の足や周囲の木々に干渉してしまうことが多々あります。特に行き止まりからの撤退など、狭い急斜面を登り返すシチュエーションで威力を発揮するのが、自転車を進行方向とは逆、つまり後ろ向きにして担ぐテクニックです。
やり方はシンプルで、バイクを反転させ、駆動系(チェーン側)が自分とは反対側を向くようにして、シートステー付近を肩にかけます。こうすることで、自由度の高い前輪が自分の背中側に位置し、歩行中の膝や脚の動きを妨げることがなくなります。両手が自由になりやすく、空いた手で斜面の木々や岩を掴んで体を支えることも可能になります。バランスが安定するため、肩への負担も分散され、疲労を最小限に抑えながら安全圏までバイクを運ぶことができます。
先人の知恵。山祭に学ぶスマートな振る舞い
かつて、ランドナーなどの重量のある自転車で険しい峠を越えていたサイクリストたちの間には、山祭(さんさい)と呼ばれる山岳サイクリングの文化がありました。彼らは道なき道を進む際、いかにして体力を温存し、機材を傷めずに難所をクリアするかという知恵を蓄積してきました。現代のグラベル走行においても、その精神は非常に有効です。
重いバイクを運ぶことは、単なる苦行ではありません。それはルートを完遂し、無事に帰宅するためのプロセスの一部です。先人たちが実践していたように、担ぎが必要な場面では一旦呼吸を整え、最も負担の少ないラインを見極める余裕を持ちましょう。急いで心拍を上げるのではなく、一歩一歩の足運びを確実にし、道具を使いこなす技術を楽しむ。こうした精神的なゆとりを持つことで、予期せぬ行き止まりもまた、旅の記憶に残るスパイスへと変わります。翌日の仕事に影響を出さないためにも、洗練された運び方を身につけ、スマートに山を楽しみましょう。

